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サンズファーム - お野菜(不定期入荷)

*お野菜(不定期入荷):"その時"のおいしいお野菜を、仕入れた分だけ限定でのご提供となります。毎日ご用意できないことを予めご了承ください。

 
有限会社サンズファーム 取締役 寺井 三郎

サンズファームは3代続く農家です。4人の社員と8人のパートさんで、45000坪(およそ東京ドーム3個分)の農地を管理しています(2020年5月現在)。農地の2/3が減農薬の慣行栽培、1/3が無農薬・無肥料・無堆肥の自然栽培で、大根やキャベツなどおよそ20種類の野菜を生産しています。

2013年からGLOBALG.A.P(グローバルギャップ)の認証に取り組み、2017年から現在まで毎年取得しています。安心・安全な野菜でみなさまの健康を守ることと同時に、耕作放棄地の再生にも取り組んでいます。また、農家目線での堆肥作りを推進し、循環型社会の実現を目指しています。

お中元やお歳暮に贈られる自然栽培の野菜

無農薬・無肥料の自然栽培は25年前に始めました。きっかけは当時、次男が患っていた小児喘息。医者にも見放されて諦めかけていましたが、食生活で体調が変わることを知り「家族のために安全な野菜を作る」と決意して自然栽培を始めました。しばらくすると次男の体調はよくなり、夜中に何度も発症していた発作の回数も激減。科学的な根拠はわかりませんが、自分の中では確かな手応えがありました。

自然栽培の野菜は慣行栽培と比べてえぐみが少なく、野菜本来の香りと味がします。農薬も化学肥料も堆肥も使わない、水と太陽と土とミネラルと微生物が育て上げる、野菜本来の力強い味わいです。嬉しいことに毎年、お中元やお歳暮として使っていただいているお客様もいます。

土にストレスを与えない

一般的に農薬は害虫や病気を防ぐ役割で、化学肥料は成長を促進させる役割ですが、自然栽培はどちらも使いません。自然栽培でそれらの代わりになるものが”土壌”、いわゆる土です。そして一番大切にしていることは「土にストレスを与えないこと」です。

土の中のミネラルや微生物を自然のままに、時間をかけて土を育て上げます。化学肥料や農薬で弱った土壌だとしても、土に悪いことをしなければ、土が本来持つ能力にまで回復していきます。あとは草取りです。これには時間をかけて丁寧に行っています。草取りだけで、全体の人件費の1/3を費やすほど。

しかし、自然栽培の畑にも波があります。例えば、土の能力を引き出すことができて、力強い大根が育つ畑ができたとしても、数年後にはまた弱々しい細長い大根になってしまいます。そんなときは畑を2〜3年休ませると、また力強い大根が育つようになります。野菜の生育は土により左右します。それだけ、土壌のミネラルと微生物のバランスは大切です。自然とは本当に不思議なものです。

これらは生科研の創始者:中嶋常允先生の考え方が基本になっています。およそ30年前、中島先生が作られた野菜を食べて衝撃を受けたことをいまでも鮮明に覚えています。その後、講演会に足を運びお話をさせていただいた後からお付き合いが始まり、中島先生はうちの畑や家にも来てくれて様々なアドバイスをしていただきました。

農薬・化学肥料・除草剤の弊害

自然栽培を始めてから最初の十数年は、様々な農地をお借りして土壌の作り替えや、虫の被害の実験を繰り返しました。そのなかでわかってきたことは、作物が虫や病気の被害にあう原因は、肥料にあるのではということでした。これは個人的な考えで、科学的な根拠を説明することもできませんが、現場作業を経てわたしが体感したことです。

例えば、化学肥料を使っていた畑で自然栽培を始めても必ず失敗します。1年目は虫の発生量も多く、畑に広がるスピードも早くて作物は必ず全滅します。2年目には虫の発生量、広がる範囲やスピードもやや鈍化して、3年目になると虫の被害はごくわずかになります。

そんなときに言われていたことは、例えばキャベツの場合、虫はキャベツを食べるのではなくて、そこに含まれる成分を食べるということ。つまり、キャベツに含まれる(土壌から吸い上げられた)化学肥料の残渣を食べると言われていました。そのため、次第に土壌内の肥料残渣が少なくなる3年後には、被害がほとんどなくなると言われていました。

また、農薬や肥料を多く使った野菜と自然栽培の野菜を腐らせてみると、臭いの質が違います。自然栽培はどれだけ腐らせても無臭または自然の枯葉のような臭いですが、化学肥料を多く使った野菜は鼻を突く、いわゆる生ゴミ臭がします。それだけ野菜は成長の過程で、根から農薬や化学肥料を吸収しているということが考えられます。

通常は3〜5年で土を作り替えることができますが、農薬や肥料を撒かれすぎた畑は5年〜10年はかかります。例えば、作物の育ちが悪いから化学肥料を撒き、肥料をたくさん撒くと病気がでるので農薬を撒くという悪循環が連鎖している農地です。特に除草剤を撒いた土を作り替えることには至難します。手で掴むとポロッと欠ける土にしてしまう除草剤は、土壌内の微生物を全て殺してしまっているのではないかと思います。

とにかく、土壌のミネラルバランスを崩す農薬や化学肥料、除草剤を使うことは極力減らすべきだと考えています。"楽できるから""成長が早いから使う"ではなくて、"食べ物"として考えることが大切。みなさまの身体になるものだからこそ、安心・安全な野菜をお届けしたいです。

もちろん、陽当たりや水捌けが悪く、自然栽培では野菜が作れない畑もあります。しかし、良い野菜が作れないからと言って、そこで野菜を作らないのは違うと思います。畑ごとに役割があると思っているので、そういった畑では、中島先生の教えにもある通り、”最低限”かつ"適性な量"の農薬や肥料を使って野菜作りをしています。

安心・安全を担保するための記録

日々の作業記録は30年前からつけていました。圃場ごとの毎日の作業、播種、生育、収穫、土壌状況など、大切なことを手書きで記録していました。誰から言われて始めたというわけではありません。ただ、無農薬・無肥料と言っても証明が何もないので、安心・安全を裏付ける意味でも記録は残しておくべきと昔から考えていました。とあるお客様は、何よりもその記録を気に入ってくださって、大口のお取引をしていただくきっかけにもなりました。

そんな経緯もあり、生産履歴を残すことはお取引先やお客様からの信用・信頼に繋がると確信したため、2013年に準備を始め、2017年に初めてGLOBALG.A.Pの認証を取得しました。

当初はすべての品目で認証を取得していましたが、1年更新で1品目ごとにかかる更新料は、我々のような小さな農家には大きな負担となるため、現在の認証は1品目に絞って取得しています。ただし、認証を取得している品目とそうでない品目では、管理工程に違いはありません。履歴の記録、検査体制、社内環境は同じです。だれがいつ来社しても、書類と合わせて明確に説明できるようにしています。安心・安全を裏付けるために。

研修生は社員として受け入れる

農家とはいえ、みんなが働きやすい労働環境を整える努力をしています。現在はパートさん含めて12名働いてくださっていて、勤務時間は8時〜17時。残業はほとんどさせません。長時間労働は注意力が落ちるので事故のもと。その代わり、一人一人の作業内容を綿密に組み立てることで、昼間にきっちりいい仕事をしていただいています。効率のいい作業方法も柔軟に取り入れて、随時改善を図っています。

将来独立を希望される研修生も、10年前から受け入れています。技術を覚える目的の研修生ではありますが、当社では社員として迎え入れています。無給や低賃金が一般的な研修生ですが、自分の子供がそういう待遇を受けたら賛成できません。だから当社は、社員として受け入れて、必要な免許や資格も取得していただきます。

自然栽培の研修はとても時間がかかります。25年実施してきた土壌と栽培方法の研究を身体で覚えていく必要があります。1、2年で身につくわけではありません。そんな長期間の研修だからこそ、社員として迎え入れたい。そして以下の二つの理由から、独立後は目の届く範囲で就農いただくことを条件としています。

一つ目の理由は、販路の開拓が手伝えること。大口の販路を見つけることが難しい自然栽培でも、目の届く範囲であれば当社の経験を伝えること、販路の紹介や協力することもできます。

二つ目の理由は、再生した農地を分け与えることができます。自然栽培を始めるには土から作り替える必要があるため時間がかかりますが、当社が再生した農地から始めることで土壌の質や特徴を理解した上で始めることができます。

農地を再生することで生まれる人の交流

耕作放棄地の再生は10年ほど前から始めました。その頃から研修生が来るようになり、彼らの農地を探すためにたくさんの農家を訪れました。そこで気付いたことは、後継者不足で農家を辞めたために、多くの耕作放棄地が存在していたこと。それをとても残念に感じたため、耕作放棄地の再生を始めるようになりました。再生させる畑では、最低限の農薬や化学肥料を使いながら、5年〜10年かけてゆっくりと土を作り上げます。

農家目線での堆肥プラント構想

いまからおよそ30年前、自然栽培を始める前に、有機栽培を行っていた時期がありました。有機栽培も同じく、良い土に加えて、良質な堆肥が大切です。全国を探した結果たどり着いた宮城県のハザカプラントさんは、有機廃棄物を3週間で土に戻す技術を持っていました(通常は2、3年)。それが気に入り、大型トラックで100台以上の堆肥を宮城県から運んでいました

普通なら、大型トラックで堆肥を運ぶと運賃がかかりコストが合わないと思うでしょうが、実際は農薬や化学肥料の使用量が減少するため、コストとしては変わりませんでした。いまでもその圃場は20年以上、堆肥や肥料を使わずに野菜を作り続けています。そのため、良質な堆肥を使うことによって、良質な土になり、肥料や農薬を使わなくても野菜を作ることができるようになります。

また、休農地の土壌を元に戻すにも、質の良い堆肥が必要です。履歴の明確な食品残渣や配合の割合、発酵のバランスなど、細かく気を遣うことで良質な堆肥ができます。例えば、紫外線にも強く、光合成能力の高い葉体を作ることもできます。現在、堆肥の製造・販売は主に地域のゴミ処理業者が行っていますが、実際には堆肥を使う農家がやるべきだと考えています。

将来的には実験農場や福祉・研修センターも併設した、農家目線の堆肥プラントの建設も構想しています。いい加減なものからちゃんとしたものへ切り替えること。地域のほかの農家さんもこの堆肥を使えば、農薬と化学肥料の使用量も2割〜3割減らすことができますし、経営的にプラスにもなります。もちろんお金も時間もかかりますが、社会的に見ても健全なこと。これがうまくいけばロールモデルとなり、全国に波及して世の中が少し変わっていく気がします。

農家を辞める人がいてもその土地を気軽に再生できるように、田舎に帰ってきた人がすぐに就農できる土台を作れるように、土壌の再生から堆肥作りまで、地域の未来を見据えて動いていきたいです。これを最初に構想した30年前には周囲の理解が得られませんでしたが、いま改めてチャレンジしていきます。

有限会社サンズファーム

取締役 寺井 三郎


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*約30年前のリサイクルプラント構想


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