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赤座農場 ー 卵


千葉県旭市にある赤座農場。2万5千羽の純国産鶏を飼育し1日2万個の卵を採取しています。開放型鶏舎で鶏にストレスを与えず、Non-GMO、ポストハーベストフリーの飼料やエコ・フィードなど、エサにこだわる養鶏家です。「エサを変えると卵の味が変わります」とは赤座繁樹氏。いままでとこれからのお話、お伺いしました。

 

戦後、祖父が立ち上げた養鶏場

当時、戦争から帰ってきた祖父は農業に従事していました。いろいろな作物を栽培しているなか、政府が推進した産地化政策の流れがあり、うちは農業から畜産にシフトして、養鶏を始めたと聞いています。しかし当時は商売としてほとんど成り立たなかったそうです。祖父は懸命に働きましたが、早くに亡くなってしまいます。わたしの父が25歳のときでした。父は一念発起し、祖父の遺した養鶏場を継ぎます。しかし養鶏に関しては素人同然だったため、地域の先輩に教わりながら試行錯誤する毎日。苦労を重ねていました。そんな中、生活クラブ生協千葉(生協)さんが活動を開始します。同じ時期に父は仲間と共に農業・畜産の組織:旭愛農生産組合(愛農)を立ち上げたのですが、ご縁があって生協さんと取引を始めることができたそうです。およそ40年前くらいですね。そこからようやく安定してきたと聞いています。


当時から生協さんは、食に対する安心・安全を貫くコアな姿勢がありました。それに倣って、父も事業を行なっていました。「一般の流通に乗ると、そのうち価格の競争になってしまう。そうであれば、卵に付加価値をつけて、他にはない安全・安心の商品を提供していこう」。父の組織はそんな考えの元、積極的に動き始めました。例えばこれからお話しするポストハーベスト・フリー*の農作物、日本で初めて輸入を行なったのは父の組織でした。


また当時は、"いい材料を使っていい商品を作ると認めてもらえて商売になる"という風潮がありました。いわゆるバブルですね。それらはもちろん質のいい商品ではありますが、当然のことながら製造原価、商品価格も上がり続けます。若くして苦労し、大手には真似できない"攻めの姿勢"を貫く父の姿を尊敬してはいますが、価格を上げ続ける、そのような付加価値の付け方に、どことなくしっくりこない印象は持ち続けていました。

 

*ポストハーベスト・フリー:収穫後農薬不使用:農作物の長期保存や、船で輸送中の防虫を目的に、輸送農作物を農薬で薫蒸すること。 殺菌剤、殺虫剤、発芽防止剤等 が主に使用されている。

"コスト"を下げて"価値"を上げる

そもそもわたしは、父の養鶏場を継ぐ気はありませんでした。適当に大学に行って東京で就職しようかと考えていた平凡な高校3年生。そんな時に地元の先輩に出会いました。何度も食事に誘っていただきました。農業への考え方や将来のビジョンなど、先輩から聞く話の全てが刺激的でした。この人みたいに熱い気持ちと芯のある人になりたい。養鶏に一生を捧げようと心に決めた、人生のターニングポイントでした。その先輩は、当時から努力を重ねて、今では産直事業を大規模に展開されている会社の社長さんです。


「いいものをつくれば誰かが認めてくれるから」そんな父の言葉もあり、しばらくは今まで通り、良いものを使って高価格な卵を作っていました。20年くらい前です。しかし自分としてはなんか腑に落ちない。時代が変わってきて理解してくれる人も少なくなって...。


「お客さまが本当に満足する商品を作ればいいだけだ」


悩んでいる時に思い出すのはいつも先輩の言葉でした。「よしやってやろう」「いまの時代に沿った、自分が納得できる商品を作ろう」「なんとかコストを下げながら、商品価値を上げていけるような研究をしよう」と、心に誓いました。それから十数年、まだまだ発展途上ですが、おいしい卵のために試行錯誤してきたことが、ようやく形になりつつあります。

国産鶏:ゴトウもみじ
6%しかいない純国産の鶏

現在日本で販売されている94%の卵は外国産の鶏の卵です。外国産の鶏は品質よりも数を産むことを重視する育種改良から生まれ、生産履歴*などの情報もすべて企業秘密です。一方赤座農場では、日本に6%しかいない純国産の鶏のみを、ヒナの時から一貫して飼育しています。鶏の品種は国産鶏の「ゴトウさくら」と「ゴトウもみじ」。国産鶏は日本の気候・風土に合うように、何世代にもわたって育種改良された鶏です。農場から食卓までの生産履歴が確認できるだけでなく、飼料管理方法やワクチン投与などの生産情報を開示することも可能です。赤座農場では、この国産鶏を生まれたてのヒナから育て上げます。場所、技術、繊細な管理が必要となりますが、ヒナから飼育する事により、飼料の一貫性、環境の一貫性が保たれて、丈夫で健康な成鶏・安全な卵へつながります。

 

*生産履歴:食品の生産過程や流通経路に関する情報。食品の生産地、生産者、生産方法、流通経路などの確認に用いられる。

生まれたてのヒナ(赤座農場提供)
卵は鶏が食べるエサそのもの

卵は鶏が食べるエサの影響を大きく受けます。エサを変えると卵の味が変わります。うちで扱っている鶏のエサはすべて、だれがどうやって作ったのか、生産者まで追えるようになっています。また、赤座農場の鶏のエサには遺伝子組み換え作物*は使っていません。鶏のエサの半分を占めるとうもろこし、大豆などもすべてNon-GMO(非遺伝子組み換え作物)です。特にエサとなる飼料用穀物は遺伝子組み換えの割合が高く、日本では昨年、政府によってようやく安全性が確認されましたが、これからもうちはうちで、Non-GMO作物にこだわっていきます。

 

*遺伝子組み替え作物:除草剤耐性、病害虫耐性、貯蔵性増大など、生産者や流通業者にとっての利点を目的に、遺伝子操作が行われた作物のこと。

アメリカにて:とうもろこし生産者と赤座さん(中)

「りんごは洗ってからたべよう」とか「みかんの皮は危ない」とか、昔はよく言われてきたと思います。その原因は、ポストハーベスト(前述)という農薬です。作物を収穫後、長期保管や輸送に耐えるために大量に散布されるんです。知らない人は農薬をそのまま口に入れるわけですから、よくないですよね。鶏の飼料になる輸入のとうもろこしも同じ状態でした。


卵は鶏が食べたエサの影響を大きく受けます。それを憂慮した父達の組織は、アメリカの大手穀物商社に交渉に行き、日本で初めて、ポストハーベスト・フリー(PHF):収穫後の農薬不使用の飼料用とうもろこしを輸入しました。当時は鹿島港に運ばれた飼料を自分たちでPHFとそれ以外に分別をしなければならず苦労も多かったそうですが、続けていくうちに需要と流通量が増え始め、しばらくは父の組織が独占で輸入代行を行っていたそうです。


いまでこそ一般的になり、個人でも手に入れることはできますが、当時から小さな問題でもしっかり提起して、自ら解決していく父親世代のスピリットは、これからも引き継いでいきたいです。

エサの国内自給率を上げるために

いつまでも動力とエネルギーを使って、アメリカから穀物を輸入すること自体にも疑問を感じていました。そのため、この10年は特にエサにこだわってやってきました。具体的には、コストを下げながら卵の質を上げることを目的とした「食品製造副産物の飼料化:エコ・フィード*」を展開しています。

 

*エコ・フィード:食品残さ等を利用して製造された飼料のこと。 エコフィードの利用は、食品リサイクルによる資源の有効利用のみならず、飼料自給率の向上等を図る上で重要な取組。

 

赤座農場では、鶏のエサの代替となりうる原料を、地域の会社から仕入れています。例えば醤油の搾り粕、魚粉、米ぬか、おから、醤油の製造工程で出た小麦などです。食品を製造する際にでた副産物を仕入れて、鶏のエサとして有効活用しています。仕入れた副産物を攪拌させて発酵飼料を作ります。そこに大豆、牡蠣殻、とうもろこし、お米などを配合して飼料を作り鶏のエサにします。


これを始めて十数年経つんですが、試行錯誤の日々でした。仕入れた副産物で実験をしてみるとうまくいかないことも多かったり、知り合いに業者さんをご紹介いただいてお伺いしても門前払いされたり...お豆腐屋さんだけでも何軒回ったかわかりません。笑

醤油の絞り粕

そこまで再利用しなくても、いままでのエサでいいじゃないか、十分じゃないかという声もあります。でもわたしはエコ・フィードを通して、"エサの国内自給率"を向上させていきたいんですね。エサの国内自給率というのは、鶏のエサ10割に占める、国産のエサの割合です。鶏のエサは通常、とうもろこしが6割~7割ほどを占めます。うちの場合は5割くらいがNon-GMO / PHFのとうもろこしで、残り2割が飼料用米、残りがエコ・フィードという割合です。


これからもエコ・フィードを通して、エサの国内自給率の目標値をできるだけ高くしていきたいと考えています。それは、地域で廃棄されるゴミの減量にも繋がるし、鶏の糞を飼料米の肥料にすることもできます。出来上がったお米は鶏のエサになります。そのほうが食物連鎖や窒素循環、地域内循環としても正しい形ですしね。いつまでも船で運んでくる輸入に頼らず、自然の摂理に沿った飼育ができると、鶏もより健康に、卵もおいしく、お客様にも更に安全・安心の形を提供できると考えています。

光や風が差し込む開放型の鶏舎
開放型鶏舎で飼育しています

鶏も人間と同様に、ストレスがかかると健康な卵を産む妨げになってしまいます。現在、日本の養鶏場で主流となっているのはウインドレス鶏舎、つまり窓のない鶏舎です。坪当たりの羽数を増やすため、6段から7段のゲージで、昼夜を照明でコントロールしています。鶏は病気に弱く、黴菌の増殖を防ぐため、鶏舎の消毒に殺虫剤を散布しているところも多くあります。このような環境では、鶏はストレスを抱えてしまいます。


一方、赤座農場では日が差し込み、風通しの良い開放型鶏舎で飼育しています。鶏は太陽の光、自然の風を感じて育ちます。鶏舎の衛生管理にも化学薬品は使用していません。水洗いや日光消毒、天然の鉱物等での環境浄化を行っています。鶏にできるだけストレスを与えない環境で育てています。


今後は、鶏をより健康に育てる取り組みを一歩前進させるため、平飼いも実験的に始めていきます。平飼いの鶏は砂浴びをしたり、木に止まって寝るなど、ストレスが少ない環境でたまごを産みます。時代の流れに沿って、お客様に更に喜んでいただけるよう、新しいことにチャレンジし続けていきます。

地域に必要とされる存在に

「赤座さんの卵おいしかったよ」とお客様からお手紙をいただいたり、見学に来られた方が生産側の苦労を理解されて感謝される機会もあります。いままでの苦労が報われる気持ちです。素直で懸命に働いてくれる外国人実習生にも助けられています。高校生のときに先輩から教わったこと、今はわたしが実習生に伝えている立場です。将来的には海外の現場に赴き、必要であれば現地の方々に飼育方法などを伝えていきたいと考えています。


また、養鶏場のあるエリアは、どうしても臭いの問題と隣り合わせです。でもいつか、臭くてもいいから、ご近所さんに必要とされるような存在になりたいと思っています。他の養鶏場との違いを知ってもらい、理解してもらいたい。そんなことが実現できるようなブランドを作っていきます。そしてこれからも、養鶏の生態に配慮した飼育を心がけ、健康で安全な食品の生産に努めていきたいと思います。


赤座農場 ー 赤座繁樹

赤座農場こだわり卵料理

季節のキッシュ

サクサクのパイ生地に流し込むのは赤座農場の卵や生クリーム、グリュイエールチーズや香辛料を加えて作ったアパレイユ。

そこに甘みがのった玉ねぎや角切りにしたベーコン、四季折々の季節野菜を加えてじっくりオーブンで焼き上げます。 季節によってズッキーニ、秋にはキノコで香りも豊かに。ランチやディナーだけでなくカフェタイム・テイクアウトでもご提供中です。 前菜としても、小腹が空いた時にも重宝する人気のキッシュ・ロレーヌです。

オムレツ

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